尾辻克彦「裏道」(1990)~こんなものなのか~
やはり意地もある。その導入に際してあれほど渋い顔をしたのに、
簡単にいい顔はできない。むかしマルクス、レーニンを神様みたい
に崇めていた人が、そう簡単に自民党には投票できない。それにまだ
小さいとはいえ犬であるから、自分の原始からの犬の恐怖も温存して
いる。しかしそんなことも長い時間の間には、少しずつなし崩しに、
角砂糖がコーヒーに溶けていくように、味噌の固まりがお湯に溶けて
味噌汁になっていくように、ちょっと例えは唐突だったが、私も犬を
引いた家人のそばを、ぼんやり駅までついて行ったのである。ああ、
味噌汁として溶けていく味噌の気持ちはこんなものなのかと、私は
裏道から見渡す凸凹(でこぼこ)の大地が、巨大なお椀のように感じられた。(*1)
蒸し暑い夜になってきました。暑気払いに威勢のいい曲でも流しましょう!
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