森卓也「パゾリーニのキングコング」(1977)~甘かった~
最近発見された「ソドムの市」の盗難ネガの中に、キングコング風の
巨猿のシーンが大量に発見された。(中略)それがパゾリーニのフィルムで
ある何よりの証拠として、コングの巨大なるUNKOにスカトロジストが蟻の
ごとく集まってむさぼるシーンが含まれており、そのUNKOが、どのように
して作られたかが議論を呼んでいる。一説によれば、それは、はるばる日本
から取り寄よせた岡崎の八丁味噌であり、それをむさぼるのは、全イタリア
赤出し愛好会同盟の面々であるとか。なお、このフィルムは、近く作られる
パゾリーニ追悼のドキュメント・フィルムに収録される予定。(*1)
そんなことはもちろん有り得ません。けれど、読んだ僕はこれを半分信じたのでした。当時まだ幼かく映画の知識もほとんどありませんでしたから、冗談と現実の境界が思うように線引き出来ませんでした。ダンプカーほどもある茶色のもわもわした山が、日本とは違う透明感のある陽射しに照らし出されています。そこに群がり茶に染まっていく裸の男女。首を傾げつつも真剣にその場景を夢想して酔い痴れたものです。
長じて後にパゾリーニの映画(*2)は観たわけですが、それまでに畏怖の念が内側で膨らんでいたせいかちょっと拍子抜けするような気分で、かえって“作り物”の可笑しさを堪能することが出来ました。僕の場合、そういう遅刻映画って案外に多いのです。最近ではホラー映画の金字塔なんて評される古い作品を固唾を呑んで観ましたが、一生懸命に作り演じている現場の苦労が透けて見え、なんか微笑ましい限りでしたね。
ウェブでの記述に従えば、どうやらチョコレートとオレンジマーマレイドを溶かし固めて作られたらしい映画のなかの偽ものは、今見れば笑ってしまうような仕上がりです。唇を歪めて困り顔の若い男優の演技も情けなくって、アハハと大口開けて笑えてしまう訳なのですが、直接youtubeのアドレスを貼り付けるのは遠慮しておきます。その代わりに映画の冒頭の清らかな音楽を流しましょうか。
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