2009年12月2日水曜日
殺し屋よりもひどい~日常のこと~
仕事に忙殺されて、ここしばらくは過ごしています。
ようやくにして身近にインフルエンザが現われて、公私共に気ぜわしい師走となりました。
鏡や窓に対峙する度に、白い口ばしを付けた自分の姿にぞっとさせられています。鳥のような、河童のような、そうでなくとも表情の乏しい僕は人間味をすっかり失ってしまったかのようで、やたらと寒々しく、薄気味悪いったらないのです。でもまあ、とりあえず生きております。
十人ほどの男女で構成された群像劇(*1)を先日観ました。その後、古書店から買い求めていた昔の本(*2)の、その作品を取り上げた頁を探し読みながら、胸のなかで静かに醗酵させているような感じです。
「そのままの位置にとどまり、いくらかの知性と、たぶんに植物的な性格を持ち、小さな苦患の世界で、むなしい期待をかけずに生きながらえていく」(*3)──そのように批評家にひと括りにされ、揶揄されている劇中の無責任な取り巻き連中と自分自身を重ね見て、かなりキツイ一発を顎に喰らった気分になりました。
「わたしから見れば、あなたは人殺しよ、人殺しよ、聞いてる?あなたはその口車で破廉恥(シニスム)な心で、人を殺したのよ……」
「怪物だわ!殺し屋よりもひどいわ!」
ブラウン管越しのおんなの嘆きが、ぐわんぐわん反響して胸の奥を行ったり来たりしています。
そんな月の初めです。
これから年末にかけて、誰もが無我夢中の時期になりますね。
ろくでもない口車は小屋に仕舞い、とりあえず鍵を抜いておきましょうか。
ドライブはいい加減慎まないと。
今日を懸命に生き、明日に生命を繋ぎながら、旧き年と新しい年に架かる橋を渡っていきましょう。
睡眠はしっかり取って、この世にたったひとつの身体を慈しみ、きっと守ってくださいね。
(*1): LE AMICHE 監督ミケランジェロ・アントニオーニ 1955
(*2): 「現代のシネマ2 アントニオーニ」 ピエール・ルプロオン著 三一書房 1969
(*3): 「行動と内心の映画」 ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ
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