先程までの青天が嘘のようです。灰色の雲に覆われた空からはジェット旅客機の轟々と言うエンジン音が落ちてくるばかり。あんなに元気だった陽射しは遙か高層にお預けとなりました。間もなく雨がぽつぽつ落ちてもきましょう。今夜は南の空に部分月食が見れるというので楽しみだったのだけど、難しいみたいだなあ。ちょっと残念──。
それでも朝からお昼を挟んでの小一時間には庭のテラスにレジャーシートを敷き、読みかけの本ニ冊と届いたばかりの本一冊を手元に置いてごろり寝転び日光浴。田舎暮らしをいいことに下着一枚の姿となって、光と風を素肌に受け止められたのは嬉しいことでした。いい休日です。
強い日差しに目が眩んでそうそう頁を繰れない訳なのだけど、それでも充足感は格別。「匂いの人類学 What the Nose Knows」エイヴリー・ギルバート(ランダムハウス)、「共感の時代へ The Age of Empathy」フランス・ドゥ・ヴァール(紀伊国屋書店)、「ヤノマミ」国分拓(NHK出版)だったのだけど、幾らか採掘箇所は重なっていますね。こういうのが好きなんだよなあ。人間って何か、男とおんなって何か、感情とは何か、生きるってどういうこと───
海外の書き手によるこの手の本を読んで感心するのは、僕たち市井の者たちの興味をうまく惹き付け、飽きが来ないようにする話術の巧みさですね。ほんとうに頭の良い人たちなんでしょうけど、例に引く小説や映画の傾向が実に広くて、時に低俗で関心します。ときどきアクセルを切り替えて、僕たちの目を醒ましてくれるのね。「初体験 / リッジモンド・ハイ Fast Times at Ridgemont High」(1982)なんてタイトルがさらり飛び出して来るのだから、とても不思議というか快感だなあ。
先日読み終えた「孤独の科学 人はなぜ寂しくなるのか Loneliness: Human Nature and the Need for Social Connection」ジョン・T・カシスポ、ウィリアム・パトリック共著(河出書房新社)では1970年の映画(*1)が取り上げられていました。興味を覚えてレンタルショップから借りてきて、昨夜遅く観たところです。こうして知識の連鎖していくことが心地良く、止められないんだなあ。
この「ファイブ・イージー・ピーセス」って映画は男って奴はどうしようもない、というこの当時に沢山創られたフィルムの一本で、今の時代でも通用すると言うか、まあ、例によって身につまされる場面の連続でしたね。(考えてみたら、そんなのばかり此処で取り上げてますね。う~ん、自虐的──)美しい情感溢れるカットやシーンも多くて、あれこれ考えさせられるものが多かったですね。Youtubeに劇中でのピアノ演奏のシーンがありましたから、メモ代わりに張っておこう。とても見事な撮影だし、こころの奥に触ってくるものがあります。
そんな休日を僕は過ごしています。
皆さんはどうですか。真夏日が続いて鬱陶しい気候ですけれど、元気に愉しく、口角をきゅっと上げてどうかお過ごしください。
(*1): Five Easy Pieces 監督・製作・脚本:ボブ・ラフェルソン 1970
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