2009年8月15日土曜日
死滅した街について~日常のこと~
仕事の合い間に、というより、遊びの合い間に仕事をこなす日々なのですが、“古代カルカゴとローマ展”が行なわれている博物館に足を運んでまいりました。観客もほどほどで、またまたゆったりとした時間を過ごすことが出来ました。
公式ホームページはこちらになっていますね。これから全国を巡るようです。http://www.karutago-roma.jp/top.html ──小規模の展覧会ではありますが、何でしょう、色彩の為せるものか、とてものどかな気配が会場を包んでいますので、お近くにて開かれた際にはお散歩がてら寄られてみたらいかがでしょう。
非情なるローマ軍の圧倒的な武力で文字通り死滅させられた古代の街に気持ちは飛びます。市民から畏怖と尊敬をもって戸口や墓石に描かれていた記号化された女神や、リアルな足指を持った若い女性が浮き彫りにされた石棺などにあれこれイメージが膨らんでしまいました。
家族や自身の平穏を日々祈り、逝く者の魂を大事に見送ったであろう古代人の儚いと言えば誠に儚い、やるせない想いの堆積に惹かれてしまったのでした。
魚醤ガルムかワインかはっきりは分からないのですが、何か液体を運搬するのに使ったらしい大きな素焼きの容器なども一緒に展示されてあって、それもちょっと面白かったですね。
けれど、会場レイアウトから察するところのメーンディッシュでもあり、訪れるひとの誰もが目するのは新生されたカルタゴの街を彩った“モザイク”装飾壁のきらびらかさです。会場の出口付近をどーん、どーんと飾るモザイク絵画の大きさは確かに奇天烈で面白く、僕みたいな天邪鬼さえも完黙させるに足る見応えがありました。とてつもなくデカイやつもあって、これは入場料を払う価値はあると思いました。
対岸に位置するイタリア半島のベネチアやフィレンツェでは、これはもう圧倒的にキリスト教の教義やイコンだらけの陰鬱なものになってしまうのですが、ここで展示されているモザイク壁画は裕福な貴族の私邸を飾ったものがほとんどです。眉間に皺を寄せるというより、人生を謳歌するために足元や浴室、食堂を覆っていたのですね。うふふ、と笑いを誘うような、のびのびとしたものが宿っています。
ブレイクの水彩画を思い出される丸みを帯びた描線と軽快な色彩は、子どもの絵本の挿絵と言われれば、そのように信じてしまえるような暖かい仕上がりです。アフリカ大陸に位置し、魚介類が豊富に獲れる海に面した恵まれた風土が根本的に享楽的な、人生を肯定する前向きな表現に落ち着いたものでしょうか。訳の分からない(笑いを誘って見える)靴職人の壁画などもあって、なかなか味わいがありました。
醤油や味噌からまたまた話題がそれていますが、備忘録と紹介を兼ねて記させていただきました。
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