2012年2月28日火曜日
“Уха(ウハー)”
“食べもの”を口に含んだ瞬間、こころの芯を燻(いぶ)され、思いがけず汗ばみ上ずって、やがて軟化させられた挙句に深い恋に落ちる、そんな設定のお話がたまにあります。
それ等はどれもこれもが地味な顔立ちをしており、起伏に欠けて退屈至極の内容と思われがちなのだけど、実際は隅々まで細工がほどこされていることが多い。後からじわり“押し味”の効いてくる層の厚い作りになっている。
日常の事象、そのひとつひとつに目が行き届き、裏打ちされた幽かな想いが寄り添います。これに気付く感度の良さ、視力や嗅覚をフルに活用しようとする意志といったものがドラマの登場人物に、また僕たち観る側にも求められてしまう。
先日観たイタリアの映画はまさにそれでした。“Уха(ウハー)”という魚のスープが登場するのだけど、これが料理の域を越えた役目を担っていて凄かったなあ。(僕の惹かれる“味噌汁”の描写に通じるものがありました。)この“Уха(ウハー)”の起用にとどまらず、色んなもの、衣裳や美術、音楽までずいぶんと手が入っていて、充足感がとてもあった。冒頭は雪の降り積もった白い街の遠景で、こんな凍てつく季節に観るのもどうかと最初は思ったのだけど、結果的にはたくさんの事を考えさせられてなかなか良い時間になりました。
今夜から明日にかけて雪の場所もあるそうですね。どうか気を付けて、怪我のないようにお過しください。温かくして風邪をひかれませんように。
(*1): Io sono l'amore 監督/脚本 ルカ・グアダニーノ 2009
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