2009年5月20日水曜日

はじめまして~「ラ・ボエーム」(2008)~


はじめまして

なんて大それたタイトル!“みそ神話としょうゆ学会”!
馬鹿じゃないかしらん、新手のカルトかよ、それとも変質者かしら、
余程アブナイ人なんじゃないかしらん──


中味はありふれた個人的な日記です。
それにしても何故“お味噌、お醤油”というキーワードにこだわるか、と言えば、
ずうっとこういう場所が欲しかったとしか答えようがありません。





少し前に“お風呂”について書かれた本を読みました。
人間がどのようにして入浴という習慣を作り上げていったか、
微に入り細に入りして掘り下げた労作です。
(この手の尾籠(びろう)な内容の本は大好きです!)
その中に“匂い”について触れているところがあります。


ちょうど今、新型インフルエンザが日本にも上陸し暴れ出していますね。
(近くにお住まいの方はさぞ心配かと思います。がんばってくださいね。)


ニュースの話題はそればかりですが、この下品な本の主な舞台となっている
昔々のヨーロッパには情報もまるでなく、医療機関も満足にありませんでした。
マスクもなければ、タミフルもありませんから、人から人への感染は
魂をさらいに来る悪魔か死神のように恐れられていました。


感染経路は“皮膚の毛穴”だという医学者(!)の見解が広く伝わったこともあって、
病人と同じ水で身体を洗ったりするのは自暴自棄の愚かしい行ないだと
思われていました!
お風呂に入ると死んでしまう!
フランス革命前後の頃は、誰も彼もが身体を十分に清めず過ごし、
国王ですら生涯で三度しか入浴しなかったらしいです。月に三度じゃないですよ!
生まれてから死ぬまで三回だけ!王様がですよ!
そんな訳であらゆる人が相当強烈な体臭をぷんぷんと漂わせていたらしいのです。


常識って何だろう、清潔って何だろう──頭の中にあった既成概念が
ひっくり返る爽快感があって楽しかったですよ。


さて、匂いについてです。
彼らは立派に生活し!恋だってするし!子どもをちゃんと作り育てていく!
あなたの臭いは素敵だ、なんて恐ろしいラヴレターを送ったりもします!
“匂い”というのはまさに“空気みたいなもの”となって、
誰も強く意識することはなくなってしまうのですね。


“食べもの”だって同じです。
あまりに日常にありふれてしまうと意識して見れなくなる。
その筆頭が日本では“味噌(みそ)”や“醤油(しょうゆ)”でしょう! 
ほとんどの人が振り向かない存在です。


でも、本当に味噌や醤油は取り上げるに価しないものかしら。
恋愛ドラマを支えたり、シリアスな群像劇を
盛り上げたりしたことはないのでしょうか。




みなさんは「ラ・ボエームLa Bohème」というプッチーニのオペラを映画化した
最近の作品をご覧になったでしょうか。
昨夜仕事を終えてから観てきました。
平日の七時前の回でしたが、お客さんは年輩のひとを中心に
二十名ぐらいいたでしょうか。まあまあの入りです。
パリの街で成功を夢見て過ごす絵描き、詩人、音楽家たちの物語です。


刺繍を生業とする純情な娘ミミと詩人が烈しい恋に落ちていきます。
その顛末をとても丁寧にカメラは追っています。
貧困に抗い切れずに波のように押し寄せる不幸。
哀しい結末にはあれこれと深く考えさせるものがあり、
年甲斐もなく涙など落としてしまいました。



開幕はクリスマスの夜。街は喧騒に満ちています。
貧しき芸術家グループとミミが訪れる居酒屋では
見事に盛り付けられた料理が次々と運ばれ、
ワインの杯が高々とかかげられ飲み干されます。
花の都に生きることの嬉しさと充実感が溢れんばかりです。


一方、日頃の彼らの切迫した家計事情も描かれています。
ほんの数切れの丸干しのイワシか何かに四人の男が群がり、
素手で肉を引き千切ってはむさぼって、
生命をかろうじて明日へ橋渡ししていきます。


この丸干しの魚こそ、お味噌やお醤油と同じ役回りだと思いました。
ワインや歓声に覆われた華々しい表舞台ではなく、
薄暗い自宅の裏側に居ればこそ、
本当の人生があぶり出されていく貴重な瞬間に立ち会うことが出来る。
「生きるということ」を露わにする大事な“鍵”だと思うのです。


「ラ・ボエームLa Bohème」の干し魚は
ボヘミアンたちの愛と別れを凝視していました。
ならば、お醤油とお味噌は私たち日本人の何を見つめてきたのでしょう。
そこにいかなるドラマが有ったものでしょう。

少しずつ少しずつ探しては書き止めてみたいと思っています。
出来るだけ楽しみながら、笑いながら続けていくつもりですから、
もしもお時間が許せば読んでいただきたいです。

そして、あなたがどこかで目にされて、世に知られていない
味噌と醤油の活躍があれば、そっと耳打ちしていただきたいです。
ここ“ミソ・ミソ、ソソソ”で、色んな方に出逢え、
情報交換がたくさん出来たら嬉しいな、と思っています。







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