デジタルリマスターされた「シェルブールの雨傘」(*1)と「ロシュフォールの恋人たち」(*2)を観て来ました。その不器用なところが気性に合うのか、60年代から70年代後半までの恋愛映画は僕のお気に入りです。
もっとも「ロシュフォール」の方は、年若い男女(カーニバルを彩るイベント屋)が群舞するオープニングシーンで冷や汗をかいてしまったのでした。はちきれんばかりの若さを競うような感じで、僕みたいな年がいった男がここにいるのが場違いの気が……。けれど、あにはからんや物語を追うに従い、スクリーンの中に分身が続々と現われました。あれこれ思案を廻らす有意義な時間になりました。好い映画でしたよ。
さて、「シェルブール」です。自動車整備工のギイと傘屋の娘であるジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)が恋に落ちます。若者の出兵を境にしてふたりの間の音信がぎこちなくなり、やがて途絶えて破綻する話です。
7月にはDVDも発売されますね。レンタルもなるのかな。未見の方はどうぞご覧ください。Youtubeから予告編代わりにちょっと触りだけ貼っておきましょう。リストアされて鮮やかに蘇った画面は、これよりさらに優雅で素敵です。
粋な会話がありました。工場帰りのギイに身体をすり寄せてドヌーヴが囁きます。「ギイ、なんかへんな匂いがするわ、あなたから」「ああ、これはガソリンの匂いだよ。俺の香水さ」
モータリゼーションの波の最中にあったとはいえ、なんとも洒落た応答です。軽く微笑み、さらに身を寄せるおんなも見事です。こんな会話が他の仕事で成り立つかどうか、あれこれ想像して遊んでしまいました。ペンキの匂い、林檎の匂い、紙幣の匂い……。
「ギイ、なんかへんな匂いがするわ、あなたから」
「ああ、これは醤油の匂いだよ。俺の香水さ」
「ギイ、なんかへんな匂いがするわ、あなたから」
「ああ、これは味噌の匂いだよ。俺のローションさ」
これはどうだろう、成立するものでしょうか。女性は軽く微笑み、さらに身を寄せてくれるものでしょうか。うむむ、そんな展開はありえませんね。けれど、考えてみれば、ちょっと不思議です。ナゼなんでしょうね。ガソリンと醤油、ガソリンと味噌……。うむむむう。
(*1): Les Parapluies de Cherbourg 1964 監督ジャック・ドゥミ
(*2):Les Demoiselles de Rochefort 1967 監督ジャック・ドゥミ
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