(*1)アマゾン河は濃いおみおつけ色である。仙台味噌の色である。そこへ、八丁味噌のリオ・ネグロとよばれる黒い川が流れ込む。人はアモーレ(愛)があれば、一夜で混血するが、ふたつの河は、たがいにゆずらずまじらず、数十キロにわたって、河の中央に二色の帯をつくってせめぎ合う。結局は、仙台味噌のアマゾン河に合流するわけだが、ボートで二色の流れのまん中に身を置くと、自然の不思議に息をのむ。折から夕焼け。血を流したような陽がゆっくりとジャングルの向うに落ち、抜けるほどの青い空が薄墨に染まっていく。これを見るだけでも、日本から二十時間の空の旅は惜しくない。(*2)台湾で飛行機事故に遭い向田邦子さんが亡くなったのは1981年の八月だから、既に27年が経ってしまっている。あれから27年、信じられない。追いかけた作家のひとりでした。講演を収録したテープを買い求めて“声”を繰り返し聞いたりもしたけれど、今にして振り向けば、淡い恋こころを僕は抱えていたみたいです。向田さんは遙かに年長の当時四十代後半ということもあり、また僕は、田舎に住む単なるガキでしかなく、クラスで一、二を争うオクテでもありましたから“恋”とか“愛”とかいう語句はついぞ意識することはなくって、あくまで劇作家として敬愛、畏怖するばかりでした。けれど、そう自分では思いつつ来たけれど、やっぱりあれは恋。NHKの「阿修羅のごとく」(*3)が代表作として印象深いけれど、彼女自身が何より素敵なドラマで目が離せなかった。
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